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本と本の意外な「つながり」ってありますよね

【書評】1ポンドの悲しみ/石田衣良

 

1ポンドの悲しみ (集英社文庫)

1ポンドの悲しみ (集英社文庫)

 

 

概要

 短編集です。30代の恋愛をテーマとした10編が収められています。
 

オススメポイント

 一気に読んでしまって全部の短編がごちゃまぜになってしまいましたが、恋愛ってすてきなものだなぁと思いました。勇気づけられるものが多かったです。どんな状況でも、なんとかやっていけるんだって思いました。
 

感想

 まだ30代ではない僕ですが、いろいろ感じさせるものがありました。個人的に「デートは本屋で」は本好きとしてたまらない短編です。
 
・ふたりの名前
 今までの苦い経験から、お互いの所有物にはきちんとイニシャルをいれて管理し合うカップル。そこに名前も持たない子猫の手術をからませる。物語の作り方が上手だなぁて思う作品。思わず涙が出そうになる

・誰かのウエディング
 主題とは関係ないけど名刺交換からのチャンス作りが印象的。干からびそうになる女性にぱっと光が差す様子がいいです。

・十一月のつぼみ
 自分は仕事ばかりに気を取られそうだなぁと思う。こんなふうに妻を悲しませたくはないなぁ。悲しい物語です。悲しい。

・声を探しに
 ちょっとだけ現実離れした設定の中で、登場人物のこころが動く。桜井がいい奴です。

・昔のボーイフレンド
 これは30代に到達していない僕でもうらやましい恋の形。元カノとの復縁。うらやましい。

・スローガール
 ちょっとだけ現実離れした設定第2段。ハンター側の気持ちも今の僕ではわかりません。ドラマをみているような。でもスローに話す女の子とそれに何故か合わせてしまう男はすぐにイメージできてしまう。不思議。

・1ポンドの悲しみ
 伝えたいことは後半の別れのシーンなんだろうけど、前半のシーンがエロすぎて困る。世界は悲しみで動いている。うーん。難しい。

・デートは本屋で
 本好きな肉食女子。いま一番付き合ってみたいタイプだかも。本好き男子の夢がつまったような作品。『これほどたくさんの本が書かれているのは、そのせいなのだ。本はひとつひとつがちいさな鏡で、読む人間の心の底を映し出す力がある。』深い言葉。

・秋の終りの2週間
 これはさすがに今の僕じゃぁ共感できませんね。はやりの年の差カップルの心境でしょうか。芸能人たちもこんな幸福な結婚生活を送れているとよいですね。

・スタンディング・オーバー
 これは、、、クサイですね。でも元気と勇気をもらえる作品です。意外なところにいい相手はいて、みおとしているのかもおしれません。


 ついでに、藤田香織さんが書いたあとがきについて
 『「あなただけ」しか見えなかったころとは異なり、あなたと私が見えている恋』。まだ当分こんな境地には達せられないなぁ、と思いましたとさ。