ネットワーク的読書 理系大学院卒がおすすめの本を紹介します

本と本の意外な「つながり」ってありますよね

【来るぞ里山の時代が】里山資本主義 日本経済は「安心の原理」で動く /藻谷浩介

里山資本主義  日本経済は「安心の原理」で動く (角川oneテーマ21)

里山資本主義 日本経済は「安心の原理」で動く (角川oneテーマ21)

 

概要

 新書大賞2014の第一位に選ばれた本です。藻谷浩介さんは「デフレの正体」を書いた方です。この本はNHKの取材班と協力して書かれています。現代社会の抱える歪を指摘し、里山資本主義という新しい概念を提唱し、さらにその実例を取材しています。

おすすめポイント

 ただ単に昔ながらの里山の暮らしに戻ろうと呼びかける本ではありません。古き良き時代を惜しむ本でもありません。未来を見据えた、先進的な理論が展開されています。これからの時代を感じさせる内容でした。

感想

 タイトルを見たときは古き良き時代の日本に立ち返ろうという類の本かなと思いました。そういう面も多少はありましたが、そこからさらに1つ先へ展開された理論が述べられていました。非常に面白かったです。

 今のままの大量生産・大量消費を続けていたら、いずれ人類は滅亡に向かっていってしまうというのは誰もが想像することです。いつか舵を切らねばならない。しかしどのような方向に転換していけばいいのかを考えることは難しいと思います。この本は環境を守る方向に向かっていくときの一つの指針を示してくれます。

 このままではダメだとは分かっているのだが、何も手を打てないまま取り返しの付かないところまでいってしまうのではないか。そういう不安を少なからず払拭してくれるお話でした。読んでいて希望が湧いてきます。特に森林資源を最大限に活用しようとしているオーストリアの実例には感動しました。ここまで進めている国があるのか、と。

 日本の将来についても意外と捨てたもんじゃないなと感じました。ただし、この未来を実現したいならば、政府やお役所任せにしていてはダメですよね。誰かが声を上げて、それに賛同する人も行動を起こしていかなきゃいけないでしょう。