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本と本の意外な「つながり」ってありますよね

【煌めく青春群像劇】もういちど生まれる/朝井リョウ

もういちど生まれる (幻冬舎文庫)

もういちど生まれる (幻冬舎文庫)

 

概要

 少しずつ繋がりを持った短編集。いわゆる群像劇というものでしょうか。主人公は高校卒業後の若者。大学生だったり、専門学校生だったりします。

おすすめポイント

 僕のような現在学生をやっている人間には共感できることがたくさんあると思います。朝井さんらしい作品なので、「桐島、部活やめるってよ」や「何者」が心に残った人にはおすすめです。

感想

 朝井さんは僕と年齢が近いです。だから、毎度のことですがいろんな言葉が胸に刺さります。今回は主人公の年齢も自分と近かったので、余計に感じることが多かったです。

 正直、ちょっと地味だなと感じましたが、悩める若者たちがどういう結論を出すのだろうと、先が気になるお話ばかりでした。

 

ひーちゃんは線香花火

 正直、オチはちょっと読めました。朝井さんらしい、比喩をたくさん効かせる表現が特徴的です。あんまり身近に感じられるテーマではないような気もしますが、統計的なデータによるとかなり多いという話を聞いたことがあります。揺れる主人公の心が描かれています。

 

燃えるスカートのあの子

 僕が意識しすぎなのかもしれませんが「何者」という言葉が何度が登場します。こちらが先に書かれた作品なので、このころからテーマとして見ていたのかもしれませんね。翔太のようなピエロなキャラも、朝井さんの他の作品で見た覚えがあったり。翔太を励ましてやりたくなるお話です。

 

僕は魔法が使えない

 ちょっと暗めの話が多いなかで、なんとなく他の短編よりも明るくて後味もさっぱりとした作品でした。主人公が難しい家庭環境でもがいている様子を書いたものなので、そこまで明るい要素はないのですが、希望が見えているからかもしれません。

 

もう一度生まれる

 オチは見えているような感じですが、ラストはどうなるのか予想できませんでした。妙に先が気になるお話でした。ちょっと暗いなぁと感じる分、最後の最後ですべてを吹っ切って前へ進んでいって欲しいと思わせるお話。

 

破りたかったもののすべて

 前の短編で「絵」が破られたことが読者に知らされます。だから読者はラストシーンが本当に気になってしまいます。僕的にはけっこう意外なラストでした。最後の最後であまり救い用がないじゃないか、と思ってしまいました。

 しかし、西加奈子さんの解説を読んでそれまでのもやもやが吹っ飛びました。平たく言えば「ありのままの自分」。それに向き合うことができるかが、5編の中では常に描かれていたような気がします。本当の自分に向き合わなければならない瞬間が書かれていたのですね。解説の鋭さも心に残る作品でした。

 

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