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【見せろ町工場魂】下町ロケット/池井戸 潤

下町ロケット (小学館文庫)

下町ロケット (小学館文庫)

 

概要

 ドラマ半沢直樹シリーズの原作でおなじみ、池井戸潤さんの作品です。この作品で2011年に直木賞を受賞されました。町工場と大企業の戦いを描きます。

おすすめポイント

 ストーリーが単純明快でとても読みやすいです。ストレスなく、一気に読める作品です。しかし、わかりやすいからといって薄っぺらいわけではないのが良いです。

感想

 解説にもありますが、善vs悪という単純な構図が目につきます。しかし、それだけが描かれている作品ではない気がします。

 組織の中の1人1人の人間がきちんと現れているのです。彼らはそれぞれに違う考え方を持ち、ときには対立することもあります。僕はまだ現実を知らないのですが、営業vs開発のバトルなどは、実際に起こりそうないさかいだろうなぁと思いながら読んでいました。とにかく、登場人物にはしっかりとした人間味を感じます。

 また、主人公たちと相対する存在として描かれている大企業の面々も必ずしも一枚岩であるというわけではありません。いろんな考え方を持った人、がそれぞれの思惑を胸に秘めて動き回ります。

 最後は主人公の熱意で町工場は一丸となり、大企業をも説得し、主人公の夢が現実のもとのなります。違う考え方を持つ人たちが最後は1つになる。ラストシーンは思わずうるっときます。

 個人的な話ですが、自分が進めている研究に関して、特許を申請することになりました。ですから、特許の話は興味深かったです。実際の経済活動ではこんなふうに特許が使われるのですね。とはいえ、自分が申請する特許は実用化には程遠いアカデミックな特許になりそうなのですが。