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ネットワーク的読書 理系大学院生がおすすめの本を紹介します

本と本の意外な「つながり」ってありますよね

【財布が語るミステリー】長い長い殺人/宮部みゆき

長い長い殺人 (光文社文庫プレミアム)

長い長い殺人 (光文社文庫プレミアム)

 

概要

 語り手が登場人物の「財布」という変わったお話。1章ごとに語り手の財布は変わります。書かれたのは20年以上も前です。当時としてはさぞ斬新なアイデアとして受け止められたのではないでしょうか。

おすすめポイント

 財布ならではの目線がとても面白いです。ストーリー自体も、事件があっさり解決するのかと思いきや二転三転。そして最後に暴かれる真相はなかなか考えさせられるものでした。

感想

 財布が語り手という変わったお話。登場人物が個性豊かで楽しめましたが、それに負けず劣らず財布たちも個性豊か。持ち主のことを第一に考えている財布もいれば、あんまりあ持ち主に良い印象を持っていない財布も出てきます。

 財布って、持ち主を表しますよね。バイトでレジ打ちしていたときにも同じことを考えていたのを思い出しました。人の財布を見る機会って頻繁にあるものではないですし。

 財布の視点から事件を書くのは難しいはずです。しかし、解説にあるように、作者の裏の意図などはほとんど感じられず、さらっと読めてしまいます。財布目線という縛りを設けているのに、いとも簡単に事件全体を描き出してしまっています。考え込まれた作品だなぁと思うと同時に、それを感じさせない自然な文章。さすがです。

 最後に暴かれる真相は「ちょっとありえないかな」と思いつつも、人間の心の闇を炙りだしています。ネット社会が発達して、さらに深くなっていきそうな闇でした。