【将軍の独壇場】ジェネラル・ルージュの凱旋/海堂尊
概要
「チーム・バチスタの栄光」「ナイチンゲールの沈黙」に続く「田口・白鳥シリーズ」の三作目です。今回のメインキャストは救命救急部門のトップ、ジェネラル・ルージュこと速水晃一です。
おすすめポイント
今作はとにかく速水のかっこよさが際立ちます。最初から最後まで彼の独壇場でした。男も惚れるイケメンっぷりです。
感想
上巻はまだまだ序章といった感じで、少しゆっくりとした展開です。相変わらずこの病院の人たちは政治や情報戦が大好きですね。現実の大学病院もこんな感じなのでしょうか・・・。みんな個性豊かで、権力争いを見ているだけでも面白いです。
下巻は怒涛のスピード感で進みました。ただの会議がこんなに見応えあるシーンになるのは、このシリーズの特権ですね。また、実際に患者を治療する場面も臨場感たっぷりです。
速水のカッコよさはちょっと反則ですね。暴虐だけど、患者の命がすべてという姿勢。口喧嘩も直球勝負です。
「あんたは何ひとつ背負わず、自分だけ安全地帯にいるからだ。そんな人間に他人を審査したり、ましてや裁く資格なんて、ないのさ」
「行動には危険がつきまとう。行動しない口舌だけの輩がよってたかって行動する人間を批判する。いつからこの国はそんな腰抜けばかりになってしまったんだ?」
そして最後、花房看護師に対するあのセリフ。
「長い間、待たせた」
もう、ぐうの音も出ません。
海堂尊さんならではの、医療に対する問題提起も忘れていません。今回槍玉に挙がっているのは、医療倫理の問題と、病院経営の問題でしょうか。どちらも、この本を読むまではまったく興味も関心もなかった問題です。しかし、自分がいつ医療機関のお世話になるかは予測できませんし、人ごとではないのでしょう。
特に病院経営、つまりお金の問題は難しい問題ですね。税金の無駄使いが報道されすぎるあまり、お金を本当に必要としている医療現場へ届いていないのだとしたら・・・。恐ろしいことです。速水のような、情熱を持った医師が声を挙げてくれることを祈るばかりです。
速水は倫理審査委員会をコテンパンにしてしまいますが、医療倫理に対するフォローも忘れていませんでした。このへんのバランスもお見事ですね。
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