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【自殺との真っ向勝負】幽霊人命救助隊/高野和明

幽霊人命救助隊 (文春文庫)

幽霊人命救助隊 (文春文庫)

 

概要

 幽霊となってしまった主人公たちが、自殺志願者のレスキューをするお話です。

おすすめポイント

 少し長いお話ですが、笑いあり、涙ありのハートフルな物語です。自殺という重いテーマですが、そこにも真っ向から向き合っているとこも、面白さの鍵かもしれません。

感想

 ジェノサイド、13階段に続いて高野さんの本は3冊目です。高野さんの作品は、どれもすごく丁寧に取材をしているなぁと思います。今回のテーマは自殺。自殺についてこんなにいろいろと考えたのは初めてでした。

 どのような人が自殺を考えてしまうのか、そしてその対処法がリアルに描かれています。

 かなり長めのお話です。途中でけっこう同じパターンが続くので、飽きっぽい人は飽きてしまうかもしれませんね。

 でも、おそらくですが、いろいろな自殺の要因に対して1つ1つ丁寧に向き合った結果がこの長さになったのではないかなと思いました。ほんとにたくさんの種類の自殺の動機が登場します。それに対して、きちんと対処法が示されるのです。筆者もまた、一人でも多くの自殺志願者を救いたいという救助隊なのかもしれないなぁと思いながら読んでいました。

 普段、自殺なんてことを考えないので、自殺ということを観点に人生を考え直してみるいいきっかけになった気がします。大事なものってなんだろうと考えてしまいます。

 身に刺さる言葉が多くちりばめられています。

『自分の死なんて一切考える必要がない。あなたが死んだことを確認できるのは、あなたではない。あなたが確認できるのは、自分が生きていることだけである。』

 死に対する認識が変わりそうな1文です。

 自分はどちらかというと生真面目な方なので、作中で救助された多くの自殺志願者と少し通ずる考え方を持っているのではないかと思いました。作中では、考え方次第で人は自殺に至ってしまう、と何度も表現を変えて伝えられています。気を付けなきゃなぁと思います。

 そして、「ジェノサイド」「13階段」の2つとちょっと異なるのは笑いの要素がところどころに入っていたことでしょうか。やくざの八木さんがほんとにいいキャラをしています。

 そしてラスト。ある程度予想はつきますが、それをやられたらじーんと来ないわけないじゃないか、という感じです。ちょっとずるいなと思ってしまうほどです。もちろん、感動してしまうわけです。

 

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