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【古くて新しい父と息子】とんび/重松清

とんび (角川文庫)

とんび (角川文庫)

 

概要

 重松清さんの「父親と息子」をテーマにした作品です。NHKとTBSでドラマ化されたので、そちらを知っている人もいるのではないでしょうか。

おすすめポイント

 ストレートなお話です。子を想う父の姿に、序盤から何度も涙ぐみました。涙もろいひとは要注意です。

感想

 主人公のヤスさんがとにかく泣かせる男なのです。不器用だけど、息子の幸せを願ってやまない。話す言葉は拙くても、思いはまっすぐです。

『ほんまもクソもあるか、家族に。大事に思うとる者同士が一緒におったら、それが家族なんじゃ、一緒におらんでも家族なんじゃ。自分の命に替えても守っちゃる思うとる相手は、みんな、家族じゃ、それでよかろうが。 』

 

 ぱっと見ると古いお話に感じます。昭和の匂いと言いましょうか、僕らが生きている今とはちょっとだけ違う世界。世界観と同様に、父と子の関係性というテーマ自体も、少し古臭いなと感じてしまいます。

 重松さん自身のあとがきの中でこの「古さ」というものに触れられています。この作品を書いた時のことを振り返って、こう述べています。

『どんな時代のどんな親子であろうとも「父親と息子の物語」といつやつは常に、良きにつけ悪しきにつけ、時代遅れになるのを宿命付けられている、ということなのかもしれない。』

 確かに真新しさはないのです。しかし僕にはいろいろと新鮮に感じられることがありました。特に、僕はまだ父親になっていないので親の苦労などほとんどわかりません。それを、ヤスさんという人物を通して一緒に悩みました。思春期を迎えた息子にはどう接するのが一番良いのでしょうか。干渉しないこと?それとも逆に、平手打ちを食らわせて道を逸れないようにしてあげるべきでしょうか?最後に答えが示されるわけではないので、ヤスさんのように悩むことが大事なんだなと思います。

 

 この言葉が印象的でした。

『親とは、割に合わないものだー。 「のう、そげん思わんか?しんどい思いをして子供を育ててきて、なんのことはない、最後は子どもに捨てられるんよ。自分を捨てる子どもを必死に育ててきたと思うと、ほんま、自分が不憫になってしまうど」 』

 僕は大学院を卒業したら家を出るつもりなのですが、親はこういう気持ちになるんですね。あぁ。なんだか申し訳なくなってしまいます。でも、ヤスさんとアキラはきちんと親離れ・子離れを果たし、その後もちょうど良い関係性を保っていけそうなラストとなりました。こんな風になれたらいいなと思います。

 そしていずれは僕も息子としてだけではなく、父親として生きることになるわけです(たぶん)。そうやって、時代は巡っていくものです。そういう意味を込めて、重松さんも「時代遅れになるのを宿命付けられている」と書いたのかもしれません。父の話は息子にとっては常に時代遅れである。でもそれと同時に、僕が感じたような新鮮さも含んでいるように思います。

 いろいろなことを考えさせられました。カテゴリBに入れます。僕が父親になったときにもう一度読み返したい作品です。

 

 

家族愛関連


こちらは母と娘のお話。何もかもが違いますが、子を想う気持ちだけは一緒でした。