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【理系探偵の登場】書評:探偵ガリレオ/東野圭吾

探偵ガリレオ (文春文庫)

探偵ガリレオ (文春文庫)

 

概要

 福山雅治さん主演でおなじみ、ガリレオシリーズの原作。その最初の一冊がこの作品です。ガリレオシリーズは作品間の繋がりがほとんどないので、どこから読んでもOKです。僕も4冊目にしてようやく第一作を読むことになりました。

おすすめポイント

 トリックが徹底的に科学的です。理系人間にはたまらないです。身近なものもあれば、そんなことは初めて聞いたぞ、というものもあります。書き方次第ではとっつきにくくなってしまいそうですが、上手いこと中和されているのもポイントですね。

感想

 ガリレオ先生こと湯川の変人っぷりがやたらと際立っています。他人にはほとんど興味を示しません。他の作品ではもうちょっと人間味が出ているような覚えがあるのですが(特に真夏の方程式あたり)、初登場の今作ではかなり無愛想ですね。

 また、短編ということもあり、他の登場人物もドライに描かれています。ガリレオシリーズは科学的なトリックが魅力の1つではありますが、一方で、人間に興味を示さない湯川が「意外と他人のことも見ている」という展開も好きです。今回は登場人物のキャラが薄い分、湯川もなんだか冷たいなぁと思いました。理系探偵というキャラをまずは立てなければならないわけですし、しょうがないことなのかな。

 ただ、草薙刑事との会話の端々には、僕の好きなガリレオ先生らしさが出ています。例えばこれ。

『「人間の思い込みとは厄介なものだ。シャボン玉の中に空気が入っていることは知っているのに、目に見えないがなめに、その存在を忘れてしまう。そんなふうにして、いろいろなものを人生の中で見落とさなきゃいいがね。」

(中略)

「俺の人生は見落としだらけだ、とでもいいたそうだな。」 「まぁ、それも人間らしくていいがね」』

 こういうちょっと哲学的で、それでいて皮肉のこもったセリフ。大好きです。

 事件のトリックはどれもバリバリに科学的で、この程度のヒントでよく謎が解けるなぁと半ば呆れてしまいます。こんなに理系的なトリックを利用できるのはこのシリーズの特権でしょう。他の推理小説の探偵さんには解けませんもの。

 天才という設定に恥じぬガリレオ先生の活躍ぶりでした。

 

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