ネットワーク的読書 理系大学院生がおすすめの本を紹介します

本と本の意外な「つながり」ってありますよね

【突っ込みどころ満載】書評:本当に頭がよくなる 1分間勉強法/石井貴士

概要

 たった1分間でできる勉強法を紹介する1冊。6万人中1位を取ったという帯がセンセーショナルです。内容は「本をパラパラと見返すことを何度も何度も繰り返せ」「重要度によって分類して大事なところは重点的に復習しろ」というようなものでした。

おすすめポイント

 こういうやり方もあるんだなという参考になります。鵜呑みにするのではなく、自分なりにアレンジして使いたいところです。ただ、いかんせん突っ込みどころが多く、本自体の内容が薄いため、新品を買うことは正直おすすめできません。

感想

 一応おすすめポイントを書きましたが、個人的にはおすすめできる本ではないです。純粋に本の内容だけを考えると、お金と時間の無駄使いをしてしまった気分です。いろんなところに焦点を当てながら感想を書きたいと思います。

勉強法について

 本書で提案される「1分間勉強法」の究極系は、本の見開き2ページを1秒で見ながらページめくっていき、1冊1分で読んでしまおうというものです。そしてその後に復習を欠かさずに行うという勉強法です。復習の際には色を上手く使って脳に働きかけ、効率的に頭に入れることが重要であると書かれています。

 たくさんの本を読むことで知識を蓄え、さらに復習によって記憶に定着していくことを狙いとしています。そのコンセプト自体は納得のいくものなのですが、やり方に関しては僕はまったく賛同できない。

「本当に価値のある情報は、直感である」(アルバート・アインシュタイン)という言葉にもあるように、「見開き2ページを1秒で見た瞬間に、直感でリーディングしてよみとれた情報」こそ、実は、もっとも価値のある情報なのです。

 いやいや、ちょっと待ってくれ。この人、勉強したことあるんですかね?原理原則を積み上げていく理系の勉強にこれが適用できないことは言わずもがな、文脈や流れが重要な社会系や言語系の勉強にもさして効果があるとは思えないのです。単語帳の暗記法の一種、ぐらいの位置づけでしょうか。

・「左脳は言語・論理をつかさどる。容量は少ない」
・「右脳は映像とつかさどる。容量は大きい」

ということなのです。現代人のほとんどの人が左脳ばかりを使っているといわれていますので、容量が大きい右脳を使えるようになることが、あなたの頭のよさを引き上げるには不可欠です。右脳は映像をつかさどっていますから、色に反応します。ということは、「色鮮やかなものを使い、それを記憶・暗記に応用する」というのが正しいのです。

 なるほどなるほど。で、そのソースは?巻末を見ても参考文献の1冊も挙がってないとはいかに。脳科学の研究は盛んに行われていることですし、お得意の1分間リーディングで論文を読めばいいのに。

 こんな感じで、あんまり信用できない内容でした。だから実践していません。 

ぱっと見で良さそうと思わせる技術

 この本は本屋で見ると役に立ちそうだと感じさせる何を持っています。少なくとも僕は買ってしまいました。魔法でもかかっていたのでしょうか。ちょっと分析してみます。

 まずはインパクトのあるタイトル。「本当に頭がよくなる」なんて言われたら気になってしまいますし、「1分間勉強法」ときたら、隙間の時間にも効率よく勉強ができることだろうかと期待してしまいます。そして帯に書かれた「6万人中1位」の文字。すげぇ、本物だ、と思わせられたのかも。

 「頭が良くなる」っていい言葉ですよね。定義がないですから。効果が出なくてクレームを言われる心配がない。「1分間勉強法」のようにタイトルに数値を入れるのもグッドですね。インパクトが出ます。そして「6万人中1位」。実際に効果があることを謳っています。6万人というのはイメージしづらくて、ただただ多いという印象を与えられるちょうどいい数字です。6千人だとなんか少なく感じますよね。

人を信じこませること

  本をパラパラめくるだけで頭が良くなるとはなんとも刺激的な内容です。これを信じてもらうためには、どういう工夫がなされているでしょうか。 

 まずは著者の権威付け。タイトルのところでも述べましたが、「6万人中1位」がその代表格です。純粋にすごいと思います。

 ただただ著者のすごさをアピールするのではなく、著者も読者と同じぐらいの普通の人なんだよというエピソードも重要です。肝心なのは「勉強法」のすごさなのですからね。そこで、浪人時代のことを持ち出したりして、自分はみんなと同じ普通の人間なんだぜと訴えかけています。

 そして偉人の名言が多数引用されています。名言をたくさん知っているということで著者の権威付けをすると同時に、あの歴史上の人物も同じことを言っているということが内容をバックアップするわけですね。

 そして肝心なところはぼかす。断言しない。簡潔にまとめない。回りくどく表現して、それっぽくする。ぼんやりとイメージできる例を挙げて(具体的ではダメ)、現実に適用できるかのように見せる。この辺が本当に上手い。たまりません。

伝説のボクサー、モハメド・アリは「倒すのではない、当てるんだ。そうすれば勝てる」(モハメド・アリ)という言葉を残しています。勉強も同じです。ほとんどの人が、一発で覚えてやろう、一気に覚えようとしています。ですが、それでは「大振り」になってしまって、ほとんど空振りに終わってしまうのです。「1発のストレートで倒すのではなく、10発のジャブを当てる」このほうが、記憶には定着するのです。つまり、同じものを何回も繰り返し復習するのです。

 上で挙げたテクニックがこれでもかと使われている名文です。すごいことを言っているようで、具体性がほとんどありません。言葉がふんわりしているんですよね。読者が読みたいように読めてしまいます。

 内容から得られるものは少なかったですが、突っ込みどころを探しながら読むと面白かったです。

 

 

オススメの本はこちらにまとめています。

A. 誰にでもおすすめできる/是非読んで欲しい作品

B. 大多数の人が面白いと思うはず/この作家さんが好きなら絶対読むべき作品 

 

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