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本と本の意外な「つながり」ってありますよね

【ちょっとタイトル詐欺?】書評:人は見た目が9割/竹内一郎

人は見た目が9割 (新潮新書)

人は見た目が9割 (新潮新書)

 

概要

 センセーショナルなタイトルで発売当初は話題になった覚えがあります。著者は「さいふうめい」というペンネームで漫画を描いている方です。劇作家・演出家としても活動し、演劇の知識もお持ちです。マンガと演劇を切り口に、非言語コミュニケーションの大事さを説きます。

おすすめポイント

 マンガと演劇という切り口が独特でよかったです。どちらもここまで考えて作られているんだなと感心しました。「コミュニケーション」というものは、いろいろな捉え方がありますね。

感想

 面白かったですが、ちょっとタイトル詐欺かなという感じです。方向性を誤解されるタイトルだと思いました。この本では「話す内容以外のすべて」を「見た目」と定義しているのです。すべての非言語コミュニケーションを「見た目」としてしまっているので、「人は見た目が9割」ってのは当然のことではないかと思うわけです。

『私たちは「本をたくさん読む人」の中に、人望もなく、仕事もできず、社会の仕組みが全く理解できていないと思える人がたくさんいることを知っている。7%の情報の中で生きている、あるいは、自分が重視していない93%と、自分が愛する7%との関連付けが行われないまま、「世渡り」をしているとおぼしき人である。そういう人と接すると「言葉が地に着いていない」あるいは「言葉が宙に浮いている」と感じる。』

 これは序盤に登場する文なのですが、なんだか捉えどころがなくてどう受け止めるべきか分かりませんでした。コミュニケーションの中で、非言語のものが伝達する部分は相当大きく、内容だけでは到底他人に響くようなコミュニケーションにならない。内容以外も大事なんだということを理解していないと、他人に影響を与えられず、結果として仕事もできない。こんな感じでしょうか。うーん。

 演劇やマンガの話は非常に面白かったです。例えば、リーダーの人間性を舞台で表現する場合。

『縄張りの中にずっと居たがる人物自信がない。だから舞台では、自信がないリーダーには、自分の縄張りの中で指示を与えるように演出する。』

 人間は無意識に人を判断している、と著者は言います。これが非言語のコミュニケーション。話す内容だけではなく、行動の一つ一つで相手をジャッジしているそうです。だから演劇も、観客の無意識に働きかけるような演出を行うそうです。ただ、無意識のことなので何だかピンときませんが。

 女性のコミュニケーションの取り方への言及も多かったです。斬新な考え方だとは思いましたが、全面的に正しい内容だとは思えませんでした。

『一般には、女性の方がアイコンタクトの時間が長い。そして、自分が話しているときより、聞いているときの方が相手を見ている時間が長い。この女性の特徴がわからないと、相手の発しているノンバーバル・メッセージを取り違えてしまう。「あんなにじっと目を見て話してくれているんだから、自分に好意を持っているに違いない」というのがそういう勘違いの代表例である。そもそも女性にはそういう特徴がある、と肝に銘じておいたほうがよい。』

 確かに、男友達がじっと目を見て話して来たら気持ち悪いとは思います。しかし本当にそうなのでしょうかね・・。

『社会的に力を持っている女性は、相手の心情を察する必要がない。相手がどう思っていようとも、命じて動かすことが大事だからである。 ところが、社会的に立場の弱い女性は、相手がどう思っているかが大事なのである。自分が生き延びるためには、相手の気持ちを尊重しなくてはならない。必然的に、相手の本心を見抜く勘が磨かれる。例えば私が何か用事を頼む。最後に「手が離せないなら後でいいんだけど」と付け加える。そのニュアンスから、今すぐやるべきか、後でもいいのかを鋭く判断するのである。』

 これも言いたいことはわかりますが、こんなことを言ってしまっていいものかと。なんだか男尊女卑に聞こえてしまうのは僕だけでしょうか。社会的に弱者である女性は、強者である男性の顔色を窺っておびえながら生きている。男女が平等だとは考えてないのでしょうか。

 いろんな切り口がある分、話が広がりすぎちゃっている印象も受けました。読み切ったあとに、ぼやっとしたものしか残っていません。一本筋が通っているともっと読後感がよかったのかなと思いました。

 

 

こちらは「見た目」から「心」を読み取ろうとする本。


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