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ネットワーク的読書 理系大学院生がおすすめの本を紹介します

本と本の意外な「つながり」ってありますよね

【描きたかったのは女?】書評:ヒトリシズカ/誉田哲也

ヒトリシズカ (双葉文庫)

ヒトリシズカ (双葉文庫)

 

概要

 5章から成る連作ミステリー。それぞれ時間、場所、主人公が変わり、事件が起きます。背後にちらつく謎の女の影。真相は果たして。夏帆さん主演で映像化もされたようです。

おすすめポイント

 次から次へと場面が移るスピーディーな展開に引き込まれます。先へ先へと読ませる構成はお見事。あっという間に終わってしまった、という印象です。

感想

 だいぶ前に「主よ、永遠の休息を」を読んで以来、久しぶりに誉田哲也さんの本を読みました。様々なところで推されているので読んでみましたが、この手のストーリーはどうしても東野圭吾さんの「白夜行」と被ってしまいます。絶世の美女が周りの人間を操り、影で悪事を働く物語。「白夜行」の他にも、三浦しをんさんの「光」なんかもこの類ではないでしょうか。「結局、背後におまえがいるんだろ」という感じで、個人的には少し白け気味に読んでいました。先入観を持ってしまうとやはりのめり込めないです。

 関口苑生さんの解説がすごく良かったです。古今東西、男性作家は「女」を描こうとしてきたが、あえなく失敗してきた。そう関口さんは言います。女性作家は「男」を書くことができるが、その逆は難しいのだと。

『まったく女性というのは今も昔も、男にとっては究極の「謎」であり、真に理解することなどできやしないのでは、という結論になるだろう』

 だからこそ、男性作家は挑戦したくなる。今作も、その系譜に連なる作品なのではないか、と。頭ごなしに他の作品に似ていると切り捨てるのではなく、その背後にあるものを考えてみると面白いですね。「女」を書きたいという根源的な欲求が作者にはあったのかもしれません。女性が本気で悪事を働こうとした場合、どんな手段を使うのか。それを追う人間はどんな気持ちになるのか。実験的な側面もあるのではないでしょうか。

 年齢設定が流石におかしいだろうとは思いました。最初の悪事に手を染めた時、犯人は小学生でしたっけ。

『あたしは暴力を、否定も、肯定も、しない。ただ、利用する。あたしなりのやり方で、暴力をコントロールする』

 この印象的なセリフも中学生のころだった気がしますが、こんなこと言えないですよねぇ。そういう細かいところに目を向けてしまうのは良くないとは思いますが。

『いや、そんな生易しいもんじゃない。人ですらないように見えた。たとえば、虫。それも、蟷螂や蜘蛛といった、極めて攻撃的な部類のそれに似た印象だ』

 こんなセリフも飛び出すぐらいですし、犯人を普通の人間扱いしてはダメなのかもしれませんね。

 

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