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【不倫地獄とミステリー】書評:夜明けの街で/東野圭吾

夜明けの街で (角川文庫)

夜明けの街で (角川文庫)

 

概要

 不倫を主軸にした東野圭吾さんの長編小説です。ミステリーでもあります。岸谷五朗さんと深田恭子さんの主演で映画化されました。

おすすめポイント

 推理小説のような謎解きのスリルを味わえる小説ではないなと思いました。不倫の甘美な地獄にはまっていく普通のサラリーマンを通して、不倫の酸いも甘いも知れる小説でした。

感想

 女性の方はこの作品を読んでいてイライラが止まらないのかもしれません。そう思ってしまうほど、主人公「渡部」が派遣社員「秋葉」との不倫に溺れていく様子は無様でした。出来もしない約束を秋葉と交わし、妻や秋葉や男友達にも迷惑をかけながらも秋葉と離れることができない渡部。彼は家庭に不満はないのに秋葉を運命の相手だと思い込み、ついには離婚して一緒になりたいと秋葉に告げます。愛人を愛人として扱い、一線を引くことができなかった渡部が全面的に悪い。僕はそう思います。物語中何度も自分の弱さを自覚する発言をする渡部ですが、だからといって具体的に行動もしない。

これは地獄だ。甘い地獄なのだ。そこからどんなに逃れようと思っても、自分の中にいる悪魔がそれを許さない。 

 この悪魔を退治することは困難でしょうね。

 不倫劇が繰り広げられる一方で、ミステリー小説としてこの物語に仕掛けられた謎は秋葉の過去にまつわるものでした。ヒントが出てくるのが少し遅くて、イマイチ盛り上がりに欠ける印象を受けました。明かされた真実はなかなか壮絶だったわけですが、不倫の要素が強すぎてぼやけてしまっている感じ。ちょっと残念でした。

 渡部ってあんまり仕事できないんだろうな、って思います。全然スマートじゃないんです。作品中では明示されていませんが、渡部の妻「有美子」はきっとかなり初期の段階から不倫に気づいていたのではないでしょうか。隠せるような器用さを持っているとは思えませんでした。有美子に見捨てられなくて本当によかったですね。ある意味これはハッピーエンドだったのでしょう。

 

 

重苦しく不倫を描いたお話でしたが、こちらはピュアな不倫の恋の物語でした。

 

直近に読んだ東野圭吾作品はこちら。極限状態に追い詰められた家族のお話でした。