【古さを感じさせない名著】「考える力」をつける本: 本・ニュースの読み方から情報整理、発想の技術まで/轡田 隆史
「考える力」をつける本: 本・ニュースの読み方から情報整理、発想の技術まで (単行本)
- 作者: 轡田隆史
- 出版社/メーカー: 三笠書房
- 発売日: 2013/09/12
- メディア: 単行本
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概要
内容はタイトルの通りです。筆者は新聞のコラムを担当していた方で、主にその経験をもとにして書かれています。
おすすめポイント
驚くべきは1997年1月初版にもかかわらず、まったく古さを感じさせないところでしょう。はっとさせられる言葉がたくさん散りばめられてました。そして2013年9月にこの形で再登場したというわけです。
感想
新聞を書いていただけあって、文章が非常にお上手だなぁと思いました。というよりも独特なものを感じるといった方がいいでしょうか。
テーマである「考える力」を磨く手段として、「なぜだろう」という疑問を追いかけていくべきだということが述べられています。頭に浮かんだ疑問を追いかけていく、こうやって書くのは簡単なのですが、実践するのは難しいです。少女が白旗を揚げている写真を見て、「なぜ白旗が降伏を現すのか」「それはいつの時代からなのか」と疑問を持てるかどうか、などなど。
考えることに付随していろいろな話題が章立てされています。書き残しておきたいことを2つメモしておきます。
まずは1章の時間の使い方。ここではカレンダーの使い方の話が新鮮でした。筆者はトイレにカレンダーをかけていると言います。これは日めくりのカレンダーではなく、1か月ごとのカレンダーであると。
曰く『一日の始まりにあたって、しばしの間でもカレンダーを眺めるのは大切なこと。まず、第一にその日一日の行動予定を考えることができる。しかもその一日は、わたしの一週間や一か月の中で孤立した一日ではない。昨日から今日へ、さらに明日へ、来週へと連なってゆく流れの中にあるのだ。』これは忘れがちなことだなぁと思います。今日は今日単独として存在しているのではないということを、常に頭において行動をしているということでしょう。
2個目が11章の発想力について書かれた部分。「青空」という題で作文を書くとする。筆者は『ある題を与えられた人々がまず思い浮かべるのは、ほとんど似通ったことばかりなのである。』と言う。「青空」の場合は美しかった青空の思い出。作文にすると、『思い出の競作』になってしまうと言う。
これはまさにその通りだなと思いました。オリジナルなことを書いているつもりでも、何を書いているのかと言えば、青空という言葉を申し訳程度に添えた思い出話。ありがちだなぁと思いました。ではどうすればよいのか。筆者はここでも『なぜ?』がものをいうと書いています。その日の青空がなぜ印象的だったのか。『一般的な意味での美しさではなく、自分にとってかくも美しいのはなぜか、を問うのだ。あくまでも、自分との関係においてである。』
なるほどと思いました。青空と自分との関係を「なぜ?」によって突き詰めていく。テーマは青空であり、自分にしか書けない文章ができあがっていくはずでしょう。
このほかにも、考えることについていろいろな切り口から鋭い考察がなされています。長い間読まれ続けて、今年改訂版が出た理由がわかる1冊でした。