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本と本の意外な「つながり」ってありますよね

【繋がる女の物語】花の鎖/湊かなえ

花の鎖 (文春文庫)

花の鎖 (文春文庫)

 

概要

 花の鎖に繋がれたミステリー。3人の女性の物語が平行して語られます。いろいろな謎が後半で一気に解決される構成です。何が鎖に繋がれているかはお楽しみ。

おすすめポイント

 最初から最後まで湊さんの手の中で踊らされていた気分になる作品でした。騙されるというよりは、見えなかった繋がりが一気に鮮明になる感じです。

感想

 湊かなえさんの作品は「告白」に続き2作目。告白が代表ですが、他の本もドロドロしたものが多い印象を受けます。個人的な見方かもしれませんが、この作品もそちらに流れていくような雰囲気もはらんでいました。

 序盤はヒントがたくさん散りばめられているような気がします。これはきっと伏線なんだろうな、という言葉や出来事が散見されます。しかしそれらが全然繋がってこない。

 そして中盤、読者が仕掛けに気づけるように上手い具合にヒントが出ます。なぜこのように平行する構成を採っていて、それぞれがどのような関係なのかをようやく掴みました。

 そして最後で一気に種明かしをします。ラストの直前までで、読者は話の大筋はつかめているのです。しかし肝心のところが分からない。まだまだ何かあるのではないかと思ってしまいます。そしてようやく明かされる真相。ドロドロしたものはほとんどなく、すべてを受け入れて許す女性の強さに心を打たれるラストでした。

 こんな感じで湊さんのなすがままでした。悔しいですが、ヒントの繋げ方がホントに絶妙で、ドキドキしながら読み進められました。

 人間の信念というものは変わることもあります。変わる人もいれば、変わらない人もいる。人以外のものに関しても、変わるものもあれば、変わらないものもある。主題とは関係ないかもしれませんが、そういうことも考えさせられるお話でした。読んだ人ならだれでも気づくと思いますが「きんつば」はヒントの1つです。きんつばの扱いを見ていくのは楽しいですよ。