【ジャンルさえも謎?】ユリゴコロ/沼田まほかる
概要
2012年の本屋大賞にノミネートされた作品です。これがきっかけで沼田さんは一躍有名となりました。この作品はジャンルをなかなか特定しづらいなぁと思いました。ホラーサスペンスでしょうか?恋愛ミステリーでしょうか?とにかく不思議な作品です。
おすすめポイント
今まで味わったことのない、不思議な読後感の作品です。前半はホラー全開だったのに、ラストはほんわかハッピーエンドになってしまったかのような。続きが気になってしまって、どんどん読み進めている内に、不思議な世界に迷い込んだ気分になる作品でした。
感想
沼田さんの本は初めて読みました。ホラー系はあんまり好きではないので敬遠してたのですが、第六感的な何かが働いて読むべきなのではないかと思ったのです。
前半は本を開くのが怖くなるぐらいおぞましい内容でした。淡々と書いてあるからこそ余計怖いです。物語がどうなっていくのか全然分かりませんでした。
しかし後半に入り徐々に雰囲気が変わっていきます。謎はたくさん残っていますが、なんとなくいい方向に向かっている?そんな感じでした。前半であれだけ殺人を描いておいて、さすがにハッピーエンドはないだろうと思っていました。
ところがどっこい、なんとなくハッピーな終わり方に仕立て上げられてしまいました。しかも読んでいるこちらもなんとなく納得できてしまう。筆者にいいように振り回された感じです。不思議なお話でした。
ただ単にストーリーが不思議なだけではなくて、構成などは良く考えられているなぁと思いました。前半で殺人鬼がどういう考え方をしているかが鮮明に読者に刷り込まれます。だからその後の父の告白や最後のシーンでは殺人鬼が何を考えているかがだいたいわかってしまうのです。
ですが、「だいたいわかる」という程度であって、殺人鬼のすべてはわからない。そこがまた不気味なところではあります。意図的に不気味に書くことができる作家さんなのかもしれませんね。ただ怖いだけじゃないようなので、他の作品も機会があれば読みたいなと思いました。
しかし結局、ユリゴコロってなんだったのでしょうね。殺人鬼がとりあえず名付けた感情が、特徴的な言葉だったから本のタイトルにもなったのかな・・?それとももっと深くストーリーに関わるものだったのでしょうか。誤解されてもおかしくないタイトルですよね。表紙もこんな感じですし僕は最初そっち系の本かと思ってました・・・。