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【個性派揃い】Fantasy Seller/新潮社ファンタジーセラー編集部

Fantasy Seller (新潮文庫)

Fantasy Seller (新潮文庫)

 

概要

 短編集Story Sellerのファンタジー版です。Story Seller同様にたくさんの著名な作家さんの作品が読めるお買い得品です。

おすすめポイント

 1番好きだなぁと思ったのは石野晶さんの「スミス氏の箱庭」。ファンタジー要素は少しだけですが、それがすごく効果的ですね。終わり方も素敵でした。

感想

 他の作品を読んだことがあるのは森見登美彦さんだけでした。いろいろな作家さんを知るきっかけにもなるかなとの期待も込めて読みました。

 ファンタジーということで剣と魔法の世界をイメージしていました。しかし、そちらの世界に話を広げているお話はなかったです。時代小説的な昔話が多かった印象ですね。森見さんのはもはやファンタジーでも何でもないだろうと思ってしまいますね。

 

太郎君、東へ/畠中恵

 ファンタジーセラーの1番バッターは河童のお話。ちょっとびっくりしましたが、河童も一応ファンタジーですよね。粋な河童の女親分の活躍がなんとも痛快なお話でした。

 

雷のお届け物/仁木英之

 「僕僕先生」というシリーズのスピンオフ。このシリーズは読んでいません。当然ですが、読んでいない人にも楽しめるように書かれています。本編を知っていたらもっと愛着をもって読めたのかもしれません。

 人間が雷になるという変わったお話ですがストーリー自体は王道ものでした。これが1番ファンタジーぽかったかもしれないです。

 

四畳半世界放浪記/森見登美彦

 四畳半神話体系は読んでいたので、それに関連するお話かなぁと期待していたのですが、森見さんの作家人生を振り返るエッセイのような文章でした。摩訶不思議な世界を創ると同時に妙に理屈っぽい森見さんの頭の中が垣間見えました。僕はこの人がすごく好きなので非常に楽しく読めましたが、そうではない人には受けが悪そうです。

 

暗いバス/堀川アサコ

 とらえどころのないお話。短編らしいのかなと思いました。先が気になってしまうストーリー展開ですが、読んだら読んだでさらっと流れ行ってしまいそう。

 

水鏡の虜/遠田潤子

 途中で投げ出したくなるほどの残酷な描写。どこがファンタジーなんだと怒りすら感じてしまいますが、続きが気になるので読み切りました。短編にも関わらず当分の間は心に残る作品になるでしょう。今作品の裏のMVPとでもいいましょうか(笑)

 ただただ残酷なだけではなくで、何か深いものを描こうとしているのはわかりますが、なかなか難しいテーマでした。頼りたくなってしまう、頼られたくなってしまう。人の心の弱さ的なものでしょうか。

 

哭く戦艦/紫野貴季

 興味深いお話だなぁという印象です。戦艦の魂、船霊のお話。艦これをやっているとよりおもしろく読めたのかもしれません。ワンピースの中にも近いエピソードがありましたね。

 

スミス氏の箱庭/石野晶

 個人的にはナンバーワンです。1つだけ取り入れたファンタジー要素を中心にしてリアルな学園ストーリーが展開されていきます。うまいなぁと思いました。起承転結の「転」を担った「願掛け」のエピソードが最後の最後に再登場して感動的なラストを作ります。うるっときました。

 

赫夜島/宇月原晴明

 竹取物語になぞらえたファンタジーバトル。スリリングで面白かったです。竹取物語平将門藤原純友のコンビという斬新な組み合わせがかなりハマってます。誰もが知っている竹取物語だからこそ、こうやってアレンジしても楽しめますね。