【あふれる疾走感】書評:白銀ジャック/東野圭吾
概要
タイトルから何となく予想できますが、スキー場に爆弾が埋められ、客が人質にとられる事件が発生します。スキー場のスタッフと犯人の、雪上の対決。果たしてスキー場は無事に営業を続けられるでしょうか。
おすすめポイント
スノースポーツばりの、スリルと疾走感のあるストーリーです。スキー場管理の知られざる苦労を知ることができるのも面白かったです。
感想
客の安全を優先させたいスタッフ側と、利益を減らしたくない経営陣も対立。もし爆弾の存在が世間に知れ渡ったら、評判がガタ落ちになってしまいます。
『君の気持ちはわかるが、正論だけで押し通すってのは、何かと難しいんだ』
そこには利害関係がある。組織に属している以上、組織の理系をないがしろにはできないのです。それを理解できてしまうから板挟みになる人もいれば、理解できないからなんとか抵抗しようとする人もいます。
『そんな格好のいいもんじゃねえよ。俺はただ、これ以上犯人のいいなりになるのが我慢ならないだけだ。遠いところからスキーやスノーボードを楽しみに来てる人たちを、いわば人質にとってるわけだろ?あの人たちには何の罪もないのに、危険に晒している。そんな汚いやり方、許せねえよ。』
スキー場の監視業務を務めるスタッフは組織からは遠いところにいます。本音と建前を使い分ける経営層とは打って変わって、犯人と対決しようとします。彼らには正義感だけでなく、スキーやスノボーの技術もあるので、身代金を回収しに来た犯人を追いかけるのです。僕自身、スノボーは何回かやったことがあるので、雪上の対決には胸が高鳴りました。
ただ、登場人物が多い割には、いまひとつ厚みがないかなぁと感じてしまいました。事件の構図はかなり複雑でしたし、なぜ物足りないと感じてしまうかは自分でもよく分かりませんが、もうちょっと骨太の物語が読みたかったなぁというのが正直なところです。
最近呼んだ東野圭吾さんの本