【わがまま人間に負けないために】書評:絶対折れない「心」のつくり方―無理せず、落ち込まず、悩まずに生きる秘訣/神岡真司
絶対折れない「心」のつくり方―無理せず、落ち込まず、悩まずに生きる秘訣 (日文新書)
- 作者: 神岡真司
- 出版社/メーカー: 日本文芸社
- 発売日: 2011/08
- メディア: 単行本
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概要
心が折れやすい人はどんな人間か、そういうタイプの人はどうすれば強い心を得られるのかを解説する一冊です。
おすすめポイント
著者の神岡真司さんはビジネス心理研究家という肩書。ちょっと胡散臭いかなぁとも思ったのですが、本の内容はなかなか興味深かったです。当たり障りのない記述も多かったですが、実践的なことも幾つか書かれていたので、予想していたよりも面白かったです。
感想
序盤は心の弱い人の特徴などが書かれているのですが、初っ端からエンジン全開といった感じ。遠慮のない物言いが面白かったです。
『無理やり要求を飲まされたり、わがまま放題の人の気分に翻弄されたりで、だんだん身も心も疲れていくわけです。 わがままな人たちのために、一生懸命付き合ってあげようとするほどに、真面目な人は消耗していく運命にあるのです。 やがて、エンドレスで続くわがままに振り回される結果、「心が折れそうになる」というわけです。』
世の中にはわがままな人間と真面目な人間が存在する。割りを食って辛い思いをするのはいつも真面目な人間。この本では心が折れることの原因を「わがままな人間による抑圧」に限定しています。大きな挫折によって心が折れることは想定していません。あくまで原因は人付き合い、という仮定のもとで話が進んでいきます。人付き合いに悩んでいるのではないという人にはあまり関係のない一冊です。
目指すはアサーティブ
個人的に一番の収穫は、「攻撃的な人格」「受動的な人格」のほかに、どんなときでも中立の態度をとることのできる「アサーティブな人格」という定義があることを知れたことです。折れない心を手に入れるためには、アサーティブな人間になることが必要だと言います。漠然と「心の強い人になりたい」と考えるよりも、目標が明確になります。本書ではアサーティブを以下のように説明しています。
『米国で提唱されてきたパーソナルスタイルに「アサーティブ(Assertive)」というのがあります。アサーティブとは、「対等な関係の下で行う自己主張」と訳されますが、強者と弱者の垣根を越えて、お互いのウィンウィンの関係を構築しようというものです。』
ちなみに以下はWikipediaより。
『アサーティブネス(英:Assertiveness、訳:自己表現・意見表明)は、多くの人間発達の専門家や心理療法士が教える特質で、自己啓発書やビジネス書などでしばしば取り上げられる。アサーティブネスは、自分を大切にすることと関連しており、コミュニケーションの重要な技法であると考えられている。』
『アサーティブなコミュニケーションをする人は、自分の心の中を開示することを恐れず、他人に影響を及ぼそうとしない。他人の「個人の境界」を尊重し、攻撃的な侵入から自分を守ろうとする。』
権威付けのされた学術的な定義ではないようですが、Wikipediaで項目ができるぐらいには有名なワードみたいです。非常に欧米チックだと僕は思います。日本人の陰湿な感じとは真逆の、個人主義的な概念でしょうか。確かにしつこいパワハラ上司に対してもこういう態度が取れるに越したことはないはずですが、それが果たして日本人に合っているのかは分からないですよね。一長一短な気がします。
反撃の方法
もう一つ本書で面白いなぁと思った点は、わがままな相手に対する実践的な反撃方法を指南しているところです。印象に残ったのは3点あります。
1.感謝
1点目はねちねちと攻撃されている最中に、ありがとうと感謝の気持を伝えて反撃するというもの。確かに相手は怯みそうです。ただ、タイミングを間違えると、バカにしているのかと思われて火に油かもしれません。
『いつも部下を馬鹿呼ばわりしているパワハラ上司が、たちまちひるんで、激情がトーンダウンしたのが見てとれるでしょう。 「ありがとう」と感謝されると、人は続けて「馬鹿野郎」とは言えなくなるからなのです。』
2.質問
2点目は質問をぶつけること。相手が冷静に考えてくれるならいいですが、一歩間違えると反抗しているように捉えられそうです。
『使う道具は、「なぜ〜〜なのですか?」という質問の言葉です。 人間は、質問されると、ついそれに答えなければと無意識に心が動かされるからです。 議論の場で、相手が優越的に攻勢を仕掛けている時でも、「それはなぜ〜〜なのですか?」の質問を差しはさんでやると、にわかに相手の論理がたじろぐ場面を見たことがあるでしょう?質問は、相手から「主導権」を奪う際の、格好の武器になるのです。』
3.攻撃
3点目は、最期の切り札としてチクっと皮肉をいうこと。本書では「とどめの一言」という書き方をされています。たまには強く出ないといけないですよね。舐められっぱなしは良くない。でも、これこそ一歩間違えたらおしまいですね。
『「とどめの一言」はタイミングを見て、自分の怒りを、言葉や感情まで高ぶらせずに、押し殺しながら言うからこそ効き目があるのです。ただし、効き目がなかったと思っても、続けて言うことはありません。一言だけで押し黙り、ストップしないと、相手と言い争っている形になるだけだからです。 』
単なる精神論にとどまらず、こういった話題まで盛り込まれていたのは正直驚きでした。なかなか面白い一冊でした。
横山秀夫さんの警察小説ではねちねちと鬱陶しい上司が出てきたりしますが、主人公の心は折れないですよねぇ。