【著者ならではの視点】教養としてのテクノロジー―AI、仮想通貨、ブロックチェーン/伊藤穰一
教養としてのテクノロジー―AI、仮想通貨、ブロックチェーン (NHK出版新書 545)
- 作者: 伊藤穰一,アンドレー・ウール
- 出版社/メーカー: NHK出版
- 発売日: 2018/03/08
- メディア: 新書
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概要
MIT(マサチューセッツ工科大学)のメディアラボという最先端の研究を行う研究所の所長を務めている伊藤穰一氏の著書です。今後世の中に浸透していくテクノロジーを紹介していきます。
オススメポイント
著者ならではの視点が面白い一冊でした。AIや仮想通貨に関しては、専門書より深いことは書かれていません。あくまで入門書です。
感想
著者の伊藤穣一氏のことを調べる必要があったので読んだ一冊です。
AI、仮想通貨、ブロックチェーンをサブタイトルに掲げ、次世代を作っていくであろうテクノロジーについていろいろ説明されています。この辺の新技術については他の本でもいろいろ読んでいるので、真新しい知識は得られませんでした。
ただ、AIやアルゴリズムを妄信しすぎているのではないかと警鐘を鳴らしたり、ビジネス規模を大きくすることだけを考えているテクノロジー企業ばかりだと問題が起きるのでは主張したりと、ストップをかける視点も大事だと説いているのが新鮮でした。
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話題自体で新しいなと思ったのは2点あります。
1点目は生体工学の発展により、人間の能力が拡張されていき、いずれはパラリンピックがものすごく面白いものになると予想しているところです。テクノロジーによる「人間拡張」と著者は呼んでいます。さらに、人間に様々な改造手術を行って能力を拡張できるようになる未来がいずれ到来するとして、そうなる前に倫理上のルールを定めておく必要があると主張しているところです。
SFの世界が現実のものになるというワクワク感があり、その手前にパラリンピックという既存のものの発展を予言しているという二段階のトピックが面白いなと思いました。自分は目が悪いのですが、レーシックもある種の人間拡張なのかなと捉えると、遠い話ではないはずです。
2点目は、アンスクーリングというアメリカで生まれた新しい教育方法。これは初めて聞きました。学校に通わせず、アンスクーリングをする拠点に子供を通わせて教育をします。カリュキュラムを一切設けず、子供が興味のあることだけをやらせるという教育方法です。
ポイントは大人からの働きかけを行わず、自発的な興味にすべてを任せる点。強制的にやらされるより、自分から自発的に勉強を行う方が楽しく、身に着きやすいというのは僕も実感としてあります。
ただ、自分の好きなことだけをやるというのが本当に子供のためになるのか、ある程度は強制された方が良いのではないかと思ってしまったりもします。現地アメリカでも賛否両論とのこと。日本で普及するのは絶望的かなという気がしますが、アンスクーリングで育った子供がどういう価値観を持っているのかは気になりますね。
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最後に一個だけ愚痴を。全体的に著者の自慢が多いのが鼻につきました。
「これはオレがやった」「これのエライ人とオレは知り合いだ」「昔からオレは○○だと思っていたがようやく認められてきた」「オレが所長を務めているMITのメディアラボはこんなにすごい」などなど…。
わざわざ文中で自慢をしなくても、著者の経歴や実績がすごいことは明らかなので、不要だと思いました。それだけです。
僕のオススメの本はこちらにまとめています。