【残業を減らせ】書評:人間使い捨て国家/明石順平
概要
著者はブラック企業訴訟に数多く携わってきた弁護士。人間を使い捨てるように働かせる日本企業の問題点を糾弾し、解決策を提言する一冊です。
おすすめポイント
僕自身の肌感覚として、本書の主張は真っ当だなと感じました。労働者にきちんと対価を払い、稼いだお金を消費に回してもらわないと日本全体が沈没していってしまうのではないかと思います。
感想
「人間使い捨て国家」。なかなかインパクトのあるタイトルだと思いませんか。センセーショナルなタイトルを付けて、なかば炎上気味に売り上げを取りに来ている本なのかなと読む前は思っていました。
著者は労働問題をメインで扱う弁護士さん。彼の主張を端的にまとめたタイトルが「人間使い捨て国家」であり、最後まで読むと良いタイトルだなと思うようになりました。日本の法律が、人間の使い捨てを助長するものになっている現状を鋭く指摘した一冊です。
現状
経団連と密接に結びついた自民党政治、そしてアベノミクスの負の側面が、最近ようやく顕在化してきているように思います。自分の仕事を通して日本の消費者の動向を見たときに、明らかに悪くなってきているのです。
日本人にはカネがありません。しかも、カネだけでなく時間もないようなのです。長時間低賃金労働で、消費がどんどん縮こまっています。もともと、自民党の政治には反対派ではなかったのですが、時間をかけてゆっくりと、日本の経済が悪い方向へと進んでしまったのかもしれないと思うようになりました。
企業や経営者を第一に考えた政策を実行していると、消費者の生活が苦しくなり、結局は企業の業績が悪くなってきます。それが目に見える形で表れてくるまでに、時間がかかったということなのでしょう。
解決策
本書で多くの紙面が割かれているのが、残業代の支払いをあの手この手で回避しようとする企業の実態であり、それを防げていない法体系の話です。法律を厳格化して、ちゃんと残業代を支払わないといけないようにすれば、残業代を抑えるために残業そのものが抑制されてくるだろうというのが筆者の主張です。
いまはそれなりに景気が良いので、残業そのものは減らないのではというのが僕の肌感覚ではありますが、残業代が増えればその分だけ消費に回ることになるでしょう。最近、有給消化が厳しく監督されるようになったので、僕の会社でも有給に関する制度が変わりました。正しく法律を変えれば、その効果はちゃんと出てくると思います。
そのほかにもいろいろな提言がなされていますが、メインの主張はとにかく残業をなんとかしろというふうに僕は受け取りました。長時間低賃金労働になっている一番の原因は残業代が支払われないことだと思います。企業の業績に大きく影響することなく、少しずつ良い方向に変わっていくと良いですね。
労働に関する本。