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【学習する組織作りとは】書評:チームが機能するとはどういうことか ― 「学習力」と「実行力」を高める実践アプローチ/エイミー・C・エドモンドソン

概要

 著者はハーバード大学の教授で、組織学習とリーダーシップの専門家。様々な組織を調査してきた経験をもとに、良いチーム作りのいろはを解説します。

おすすめポイント

 実例を交えながら説明することで、非常に説得力のある議論が展開されています。腹落ちしない部分もあるかもしれませんが、印象に残るところもあるはずです。

感想 

 原題は「TEAMING. How Organizations Learn, Innovate, and Compete in the Knowledge Economy」なので、「チーミング。高度知識社会において、いかにして組織は学習し、イノベーションを起こし、競争していくか」みたいな感じですね。邦題はわかりやすく言葉を選んでつけたのでしょう。

 学習をしながら仕事をこなしていく組織が今後求められていくという主張のもと、組織をめぐる様々な要素を解説していく一冊です。僕がとくに気になったところについて重点的に書いていきます。

実行するための組織 vs 学習するための組織

 2つのタイプの組織を概念的に持ち出し、比較しながら組織のあるべき姿を論じていきます。「実行するための組織」はオールドタイプ、「学習するための組織」はニュータイプです。

 実行するための組織は、ヘンリー・フォードが発明した自動車の組み立てラインに端を発した組織形態です。とにかく効率だけを求め、人間は大きなシステムの中における歯車の1つとして機能します。実行するため「だけ」の組織と言い換えたほうがわかりやすいかなと思いました。

 一方の学習するための組織は、構成メンバーひとりひとりが、仕事を通して学習していき、よりよいクオリティを求めて常にアップデートされていく組織です。学習するための組織と言うと僕は勉強会みたいなものを思い浮かべてしまうので、学習しながら機能する組織というふうに捉えていました。

 

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 僕自身、いまちょうど学習するための組織にいるので、理解しやすい対立概念でした。会社内はおろか、業界内でも前例のないことにチャレンジしようとしていて、日々直面する新しい課題に対して、失敗を重ねながら何とか成功への道筋を見つけようともがいています。

 本書でも書かれているのですが、学習しながら仕事をしていくのはとても苦しいです。誰かが決めた正解の手順があって、それに従っていれば怒られないという仕事であればどれだけラクかと思います。ただ、それだと組織にとっても良くないですし、自分にとっても良くないのですよね。

 実行するためだけの組織では、変化に対応しにくいです。環境の変化が起きても、手順が決まっているのでその通りにしか仕事がなされず、アップデートする機会が限られてきてしまいます。

 また、自分自身にとっても、頭を使わずに仕事をすることになるので、得られるものが小さくなってしまいます。手順通りに行うことが評価軸になるので、上からの命令に従順にならねばならず、ストレスを感じてしまうでしょう。

心理的安全

 学習するための組織を作るためにはどのようにしたらよいかについてもいろいろなアイディアが述べられています。その中で、心理的安全という概念が心に残りました。

 メンバーひとりひとりが、思っていることを自由に発言できると心から感じている状態を、心理的安全がある状態と言います。間違っていることを言ったときに、怒られたり、笑われたりすると、今後発言するのが怖くなってしまいます。そうした状態は心理的安全がない状態ですね。

 自分が新入社員として最初に配属されたチームで、こんなことを言ってしまって良いのだろうかと不安になりながら会議に臨んでいたことを思い出します。何も知らない新人のくせにと思われたらどうしようと、新入社員独特の悩みだったとも思うのですが、心理的安全の大切さを身をもって知った機会です。

 心理的安全が保障されていないと、リーダーの言うことに従うイエスマンばかりになってしまいますし、メンバーが気づいた重大なリスクが見過ごされたり、その人だからこそ思いつく革新的なアイディアが共有されなかったりします。学習するための組織を作るためには心理的安全が絶対に必要というわけですね。

 

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 心理的安全の大事さをわかりやすく伝える四象限分類が図示されていました。

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 家族や友達との雑談は「快適ゾーン」ですよね。会社員の多くは「不安ゾーン」の中で仕事をしているのではないかと思います。理想は「学習ゾーン」に入ることです。

 心理的安全を保障できるかはリーダーの態度にかかっていると書かれています。リーダーが自分の知識の限界を認めるとか、自分もよく間違うことを示すとか、とにかくメンバーが発言しやすくなるような雰囲気づくりを目指していく必要があるというですね。自分がリーダーになったら、絶対に意識しなきゃなと思ったことでした。

 

 

 

チーム論とかリーダー論とか

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