【汚名をすすぐ熱き闘い】木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか(上)(下)
概要
物騒なタイトルが目を引きます。戦前・戦後の格闘技界の裏に迫るノンフィクションです。主人公の木村政彦は、馴染みがない方が多いと思いますが、最強の柔道家なのです。
おすすめポイント
格闘技に興味がある人にはたまらない内容なのではないでしょうか。しかし、僕のような格闘技に一切興味のない人間も楽しめます。熱い人間ドラマです。
感想
読んでみたくなった理由はいろいろあって、文庫化されるのが早かったような気がするのも1つ。文庫版の帯に書かれた宣伝文句も、上巻は「永遠の0」の百田直樹さん、下巻は「バキ」シリーズの板垣恵介さんが担当していて豪華です。大層なものが書いてあるので読んでみました。
柔道や格闘技に大して興味がない人は、上巻を読み進めるのに少し苦労するかなと思いました。序盤は思うようにスピードが上がりませんでした。ノンフィクションってたいていこんな感じですよね。
上巻はこんなにいろいろな歴史があるのだなぁと思いながら読んでいました。主人公である木村の人となりを理解するためには上巻の話がけっこう重要です。それが下巻に起こる事件にも影響してくるのです。
上巻を読んでいる時点では、タイトルの「なぜ殺さなかったのか」の答えも気になります。一体どのような答えが用意されているのでだろうかと思いながら下巻に突入します。
下巻では、話題が核心に入ったので一気に読むスピードが上がりました。力道山との試合のシーンは、取り巻きの人の思いがありありと伝わってきてほんとに手に汗握ります。ただ、「なぜ殺さなかったのか」の疑問に対してはあんまり明確に触れられていないなぁとも思ったのですが。
ただ、「木村政彦の汚名をすすぎたい」という筆者の思いが痛いぐらい伝わってきて、「なぜ殺さなかったのか」ということに関しては、もはや何でもいいかなという気になりました。約20年をこのノンフィクションを書くことに費やしていることを考えると、言葉の重みが違います。
木村を尊敬しているからこそ「木村は負けたのだ」と書く心意気。すばらしいなと思いました。登場する格闘家たちはもちろん、筆者の増田俊也さんも熱い男です。
最初から最後まで熱い熱い男の世界でした。終わり方も素敵です。