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本と本の意外な「つながり」ってありますよね

【集められた理由は?】書評:かがみの孤城/辻村深月

概要

 不登校になってしまった主人公の部屋の鏡が、不思議なお城へと繋がり、同じようにして集められた子どもたちと出会います。この出会いはなんのためなのか。

おすすめポイント

 少年少女の繊細な心情描写と、その裏に緻密に組み立てられたミステリー。辻村深月さんらしさ全開の作品でした。

感想

 主人公「こころ」がなぜ不登校になってしまったのかを繊細に描くのが序盤パート。辻村深月さんらしいリアルな描写が光ります。この部分が意外と長くて、個人的にはちょっとしんどかったですね。

 中盤は城に集められた子どもたちと仲良くなっていくパート。このへんから終盤の種明かしパートのための伏線が撒かれ続けていたのですが、なかなか気づけませんでした。こころと同様に不登校になってしまった子供たちの不器用な触れ合いの描写がこれまたお上手です。

 終盤は怒涛の伏線回収パート。鳥肌が立ってしまうような見事な仕掛けにもう茫然です。ヒントの出し方が徐々に濃くなっていくのが上手いんですよね。カセットのウォークマンからポケベルの流れあたりでようやく気が付いたのですが、辻村さんの掌の上で思い通りに転がされた感覚があります。

 

****

 

 登場人物たちほどではありませんが、自分にとって中学校はけっこうしんどい場所でした。この物語を読みながら、あのときの思い出がチクチクと蘇ってきました。ただ、自分ももうだいぶ大人になってしまって、こころたちに共感できるほどの感受性もなく、我が子の成長を見守るような目線で読み進めていました。

 そういう自分が読んでも、「不登校」というつらい現実に立ち向かう主人公たち一行の感情の揺れ動きにどうしても注目が向いてしまいます。その裏で、この作品全体を使ったミステリー要素が動いていたとは。参りましたという感じでした。

 いまのようなご時世にあって、人と繋がることの難しさと大事さを痛感します。ラストでは、時の流れに隔てられたとしても、それでも繋がろうとする人間同士の運命というものを見せられました。こういうふうに、不思議な力で人の運命って交わってしまうことがあるんですよね。ふとしたきっかけの繋がりを大事に生きていきたいものだと思いました。

 

 

 

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