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【戦争を陰で動かす】書評:ドキュメント 戦争広告代理店 情報操作とボスニア紛争/高木徹

概要

 1992年に始まったボスニア紛争の裏で行われた激しい情報戦争を描いたドキュメンタリーです。主役はアメリカの広告代理店。なぜ彼らが介入することになったのかから始まり、事の詳細が明らかにされます。

おすすめポイント

 日本人にあまり馴染みのない分野だと思うので、こんなことが起きていたのかと素直に驚きました。PR戦略という観点ではビジネスにも通ずるところがあって、意外と自分の仕事にも還元できそうだなと思いました。

感想

 日本だと広告代理店が必ずしも良いイメージを持たれているわけではないことと、このタイトルの付け方から、広告代理店を悪者として描いていく本なのかなと最初は思っていました。悪役のあくどい手口を暴露するタイプの作品というふうに。

 読み進めていくとすぐに自分が勘違いしていたことに気づきました。人の心を動かすプロフェッショナルの仕事を追いかけたドキュメンタリーでした。

 戦争の裏でこんなことが起きていたのかというのが一番の驚きでした。1992年頃のお話なので、最近の話というわけでもないんですよね。国際世論を動かすことで戦争に干渉していくという発想自体が数十年前から存在していて、こんなにも鮮やかに実行されていたのがすごいなあと思いました。当事者国ではないとはいえ、広告代理店が陰で先導していることを自分が全く知らなかったことを含めて驚きでした。

 1992年には当然SNSがあるわけでもなく、高度なツールや人海戦術を使わずとも人脈とマスメディアを駆使するだけで思惑通りに世論が動いていく仕組みを理解することができました。道具は移り変われど、大衆の雰囲気を動かしていくという勘所は今も変わらないのだろうなと思いました。

 ノンフィクションなので徹頭徹尾戦争のことしか書かれていませんが、戦略を持ってPRを展開していくことの重要性は、戦場だけでなくビジネスの場でも有効だろうなと思いました。そういう意味ではビジネス書としても面白い読み物だったなと思います。

 良いモノやサービスを作ったとしても、その存在をターゲットへ正しく伝えないと購入してもらえません。戦略的なPRが必要だなと痛感しましたし、世論からネガティブな印象を持たれてしまうと挽回するのは骨が折れることなのだなとも思いました。

 

 

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