【1人を深堀せよ】書評:たった一人の分析から事業は成長する 実践 顧客起点マーケティング/西口一希
たった一人の分析から事業は成長する 実践 顧客起点マーケティング(MarkeZine BOOKS)
- 作者: 西口一希
- 出版社/メーカー: 翔泳社
- 発売日: 2019/04/08
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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概要
著者はP&G、ロート製薬、ロクシタン等でマーケティングを担当してきた人物です。いまはスマートニュースの執行役員。様々な業界でマーケティングを行ってきた経験をもとに、著者が編み出した分析手法を解説する1冊です。
オススメポイント
わかりやすくユニークな主張で、最後まで面白く読めました。汎用性の高い顧客分類のフレームワークが紹介されているので、マーケティングのフレームワークを知りたい人にもおすすめです。
感想
「たった一人の分析から事業は成長する」というサブタイトルは「N1分析」と筆者が呼ぶ分析手法のことを指します。N1分析のほかに、「顧客ピラミッド」「9セグマップ」というフレームワークも解説されていて、この3本柱がメイントピックとなっています。
N1分析
たくさんの人にアンケート調査をするだけでなく、生身の一人の人間に注目し、その人がなぜこの製品を使っているのか/使っていないのか等を深堀していく分析手法です。曖昧な存在であるペルソナを設定するのではなく、自分の親戚や友人など、具体的な人を挙げて、その人にいろいろと質問を重ねていくことで自社の製品を分析していきます。
アンケート調査の結果から回答が多かったものをつぎはぎしていくと、誰にも刺さらない中途半端な製品ができてしまうことがあります。そうではなくて、こういうものを作ればこの人は絶対に買ってくれるという自信を起点にすることで、多くの人が欲しがっている商品を開発することができます。
自分はいまゲーム会社のグッズ制作をしていますが、同じようなことがよくあるので、この主張は深く納得できるものでした。変にロジックをこねくり回して立てた企画は大抵魅力的にならないんですよね。それよりも、こういうグッズを作ればこの人が絶対に買ってくれるというものを作った方が売れる気がします。
この本では製品の訴求ポイントや広告の独創性などをまとめて「アイディア」と呼んでいます。気持ちはわかるのですが、英語の「idea」や日本語のアイディアとは意味が近いようで異なっているので一抹の気持ち悪さを感じながら読んでいました。言わんとしていることはわかるんですがね。
「アイディア」は、一部のトップマーケターやクリエイターのひらめきでしか生み出せないものではありません。手順を踏むことで、必ずその糸口をつかむことができます。一方で、「アイディア」は合理性や理論だけで創出できるものでもありません。人の行動は、合理性だけでなく、心の動き、深層心理の変化に左右されるからです。競争を抜け出し、際立った成果を上げるためのすべてのヒントは、一人の顧客の心理にあるのです。
上記の箇所には全面同意です。
顧客ピラミッド
汎用性の高い顧客の分類方法です。ピラミッド状に顧客を分類し、ターゲットを絞ってN1分析を仕掛けていくことで、事業の強みを伸ばしたり弱みを補ったりしていきます。ピラミッドを上から5つに分けます。
- ロイヤル顧客
- 一般顧客
- 離反顧客
- 認知未購買顧客
- 未認知顧客
意味もそのまま言葉の通りです。どんな商売をしていても使えそうなフレームワークです。
9セグマップ
顧客ピラミッドの上から4つをさらに2つにわけることで9つのセグメントができます。それを9セグマップと呼んでいます。顧客ピラミッドの発展版ですね。
2つにわけるポイントはそのブランドに対する顧客の印象です。そのブランドが好きで積極的にその商品を購買している層と、特に理由はないけど買っている層に分ける分析手法です。未認知顧客はそもそもその商品を知らないので2つに分けられません。
9つもあると複雑そうに思えますが、考え方を理解すればかなりシンプルで、これも汎用性の高い分析手法だなと思いました。N1分析にも通じますが、その商品をなぜ買っているのかというところに注目するのはとても大事なことだなと思います。
また、ブランドの価値を上げるというのは今後ますます大切になっていくと思います。どんな商品もコピー品が簡単に出回る時代です。そのブランドが好きだから買ってくれている人をいかに増やすかが重要になってくるでしょう。そういう時代性を捉えている良いフレームワークだなと思いました。
僕のオススメの本はこちらにまとめています。
B. 大多数の人が面白いと思うはず/この作家さんが好きなら絶対読むべき作品
そのほかマーケティング関連の本