【原点回帰の短編】書評:虚像の道化師/東野圭吾
概要
探偵ガリレオシリーズ第7弾。7つの短編が収められています。ガリレオシリーズは話の続きがないため、この作品から読み始めても大丈夫です。
おすすめポイント
コンパクトながら読み応えのある短編が7つ並んでいてたっぷり楽しめる1冊です。もちろん似たような話はなく、全く違った展開を楽しめます。
感想
『探偵ガリレオ』『予知夢』『容疑者Xの献身』『ガリレオの苦悩』『聖女の救済』『真夏の方程式』に続くガリレオシリーズ7作目です。直前の2作は長編でしたが、もともとは短編として始まったこのシリーズ。7作目は原点回帰の短編集です。
湯川というキャラクターは人間にあまり興味を示さないタイプなので、どちらかといえば推理要素が強くなって、淡々と物語が進むのがこのシリーズの特徴です。ですが、真夏の方程式は人間模様を描くことに力が割かれていて、湯川先生の新たな一面を見ることができました。その流れを受けつつも、原点である短編という形式に戻ってきた今作は、両方の良さを楽しむことができる1冊になっていると思いました。
ガリレオシリーズの短編は独特のリズムを持っています。湯川先生と草薙刑事の一見すると冗長なやりとりが続いたかと思えば、推理の材料が集まった瞬間に急転直下で事件が解決している、なんてことがよくあります。ダラダラしない潔さが好きです。
湯川先生は他人にあまり興味を示しませんが、冷たい人間ではありません。そこをきちんと毎回描くのが丁寧だなと思います。今作で言えば6つ目の短編である「偽装う」。優しい決着の付け方に胸が熱くなります。
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B. 大多数の人が面白いと思うはず/この作家さんが好きなら絶対読むべき作品
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