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【完結】書評:岳飛伝 十七 星斗の章/北方謙三

岳飛伝 十七 星斗の章

岳飛伝 十七 星斗の章

 

概要

 水滸伝、楊令伝に続く北方謙三の北方水滸伝第3部。その17巻、最終巻です。

感想

 ついに岳飛伝も完結。長きに渡る旅路に終止符が打たれました。ひとまず、すべて読み切れたことでほっとしました。何らかのアクシデントで最後まで読み切れない可能性もなきにしもあらずでしたから。

 終わり方としては、梁山泊側がついに勝利をもぎとるという形になりました。水軍を叩き潰し、南に入った石信を撃破し、程雲を倒して南宋軍も壊滅、サケツを倒して金軍にも立ち直れないほどのダメージを与えました。

 しかし、あまり勝った気分がしません。喜びがありません。それは、勝利に意味がないからなのか、勝ったあとの描写が少なかったからなのか、それともこの物語が終わってしまうのが寂しいのか。

 物語の主人公岳飛は、この巻でついに中華の戦場の真ん中に復帰。彼が抱いた抗金の旗のもと、何十万という義勇軍を集めて戦に勝利します。働きっぷりはまさに英雄。しかしラストは南へ戻り、猿の骨郎だけに見守られて息を引き取ります。物寂しい最期でした。

 僕の勝手な予想では、胡土児が物語のカギを握るようになると考えていたのですが、あっさりと退場してしまいました。

 そして物語の最期を締めくくったのは候真と史進でした。長い長い時間の中で、史進だけがすべての戦いを経験することとなりました。水滸伝や楊令伝のころから死に場所を探していると言われ続けたこの男が、戦場で死ねなかったことは、ある意味最も残酷な仕打ちだったのかもしれません。

 このあと、中華の世界はどうなっていくのか。物流に飲み込まれ、金も南宋も機能を失っていくのでしょうか。ショウケイザイが途中から一切表舞台から姿を消していたのも、なにかを暗示しているのかもしれませんね。彼がいてもいなくても、時代のうねりは進んでいく。そんなことを思いました。

 

 

岳飛伝シリーズ。 

 

 

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