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【ダークしをん】光/三浦しをん

光 (集英社文庫)

光 (集英社文庫)

 

概要

 三浦しをんさんの長編小説です。理不尽な暴力によって歪められてしまった人たちの人生を描きます。あらすじを見ればわかると思いますが、明るいお話ではないです。

おすすめポイント

 正直、どこをおすすめできるかと言われたら答えられないのですが。。。印象に残るお話でした。

感想

 怖いもの見たさで買いました。「暴力は帰ってくるのだ」なんて帯がかかっているので、幸せな話なのだろうとは思わないですよね。

 三浦しをんさんといえば「船を編む」「神去なあなあ日常」などを読みました。なのでちょっとほっこりするようなお話を書く人だと思っていました。しかし暴力がテーマだということで、いったいどんなお話になっているのか気になってしまったわけです。

 ハッピーエンドで終わるわけはないなと予想していて、もちろんその通りになったのですが、登場人物たちはとことん不幸だなぁと感じてしまいます。

 誰もがまともに考え、まともに生活を送っているようで、誰一人としてまともな考え方をしていないような。何が「まとも」なのかと聞かれたら僕も困ってしまうのですが、島で生き残った3人も、南海子でさえも考え方はまともではない気がしてしまいます。

 そして恐ろしいことに、物語が終わったあとも多少状況に変化はありましたが、まともではない生活が続いていくのです。主人公たちの考え方も大きくは変わらないでしょう。生活が続いていく恐ろしさなんて初めて感じました。

 東野圭吾さんの「白夜行」が思い起こされました。絶世の美女が男を使って生きていくところは似ていますが、こちらには「ただ使っている」感じが出ていて恐ろしかったですね。男の方は盲目的に女を想っているというところも、読んでいて苦しい。

 ただただハッピーなお話よりも、やはりこういうダークなお話の方が心に残る気がします。こういうお話を読んだなぁって忘れないような気がします。そういう作品の1つになりました。

 

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