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本と本の意外な「つながり」ってありますよね

【予想以上に実践的】書評:伝える力/池上彰

伝える力 (PHPビジネス新書)

伝える力 (PHPビジネス新書)

 

概要

 池上彰さんが2007年に書いた本です。ビジネスマンの日常シーンをイメージし、伝える力の重要性およびその磨き方を指南する一冊です。

おすすめポイント

 池上さんが言うならそうなんだろうな、という具合に説得力を感じます。ネームバリューもあるとは思います。しかしこの本の文章はどこをとっても本当に読みやすく、こんな文章を書けるようになりたいと思わされます。

感想

 この手の本には、自己啓発的な内容に終始して具体性に欠けるものも多い印象があります。しかしこの本は実践的な内容が多くてためになります。

『見直しはプリントアウトをした上でも行う。さらに欲をいえば、書いた後、しばらく「寝かせる」ことがより望ましいといえます。寝かせる期間は、長い文章であれば、できれば一週間ほどです。そのあいだ放っておいて、頃合いを見て、自分が書いた文章を見直します。』

 例えば、この方法は僕も使っている見直し法でした。時間を空けてから見直すと、自分の文章が全然だめに見えて、たくさん手直しを入れたくなります。プロの記者である池上さんも使っていると知ると、うれしくなりますね。

『物事を誰かに伝える場合は、独りよがりにならないようにすることです。そのためには、「もう一人の自分」を持って、それを育てていくとよいでしょう。』

 こちらはちょっとユニークだなと思いました。「もう一人の僕」なんて聞くと、遊戯王を思い出しませんか。池上さんはあのマンガを知っているのでしょうか。何かを書くときは、自分の中で客観視しながら書くべきだということですね。面白いなと思ったのは、そのもう一人の自分を「育てる」という書き方がされていたことです。「育てる」という感覚を持って、客観的に見る力を自らの手で養っていくべきなのですね。

 文章力を高めるために「そして」「それから」を使わないで文を書くと良い、というのには驚きました。

『文章の論理が続いていれば、あるいは、時間の経過が明らかならば、「そして」や「それから」を使わなくても、スムーズな文章が書けることがわかると思います。 むしろ、「接続詞を使わないで文章を書こう」と決意しますと、接続詞がなくても論旨が通るように文章の論理をとぎすまさなければなりません。この努力を続けていると、論理的で読みやすい文章が書けるようになるのです。』

 ただ言うだけにとどまらず、実際に例を示してくれます。試しに「そして」が多用された小学生の作文のような文章が示されます。そのあとに、「そして」を一切使わない、同じ内容の文章が書かれていますが、その違いには驚きます。書いている内容自体は難解なものではないのに、一気に大人びて見えるわけです。すごいなぁと思いました。

 この本を読んで以来、「そして」「それから」をなるべく使わないようにしてブログを書いていますが、どうしても使いたくなってしまいますね。きっと文と文の意味のつなぎ方が強引なんだろうなと思っています。上手い文章は、自然に、流れるように文がつながっていきますよね。そんな風に書けるように、がんばりたいと思います。

 

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