【100年続く企業の秘密】書評:ビジョナリー・カンパニー ― 時代を超える生存の原則/ジム・コリンズ
- 作者: ジム・コリンズ,ジェリー・I.ポラス,山岡洋一
- 出版社/メーカー: 日経BP社
- 発売日: 1995/09/26
- メディア: 単行本
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概要
長きに渡る伝統と、革新的な手法で業界をリードしてきたビジョナリー・カンパニーをピックアップし、その築き方を解き明かす一冊です。豊富な事例と徹底的な検証結果が述べられています。
おすすめポイント
堅苦しい内容ですが、予想しているより面白く読めると思います。問題設定や、分析の手法が非常に優れています。不朽の名著と言われている理由がよくわかりました。
感想
400ページの大作です。ここでは結論部分から見て、内容を書き残していこうと思います。
『ビジョナリー・カンパニーをつくりあげた人たちが必ずしも、とくに優秀なわけでも、とくにカリスマ的なわけでも、とくに創造的なわけでも、とくに複雑なことを考えたわけでも、とくに偉大な理想を考え出す能力に恵まれていたわけでもないことに気づいた。要するに、魔法使いのような人物ではなく、ごく普通の人間だったのだ。こうした人たちがやったことは、経営幹部、CEO、起業家ならそれこそだれでも理解できるものばかりである。ビジョナリー・カンパニーをつくりあげた人たちは、ビジネスについて、じつに単純な方法をとっている。単純すぎるとすら言えるかもしれない。しかし、単純さは安易さを意味するわけではない。』
この本では、あっと驚くような裏ワザ的なものは出てきません。単純だけど、効果が高く、また、実践するのは難しくないですが、やり続けるのは非常に困難なことがビジョナリー・カンパニーを作る秘訣だとされています。
『1.時を告げる予言者になるな。時計をつくる設計者になれ 2.「ANDの才能」を重視しよう 3.基本理念を維持し、進歩を促す 4.一貫性を追求しよう』
大事なのはこの4点。この4点を解き明かすために行われた膨大な調査の記録や、ここに至るまでのエピソードがたっぷりと語られています。
1.時計をつくること
時計の絵が表紙に書かれているように、時計を作ることは本書の中でキーワードの1つです。
『組織を築き、経営している読者に向けた本書の主張の中で、何よりも重要な点をひとつあげるなら、それは、基本理念を維持し、進歩を促す具体的な仕組みを整えることの大切さだ。これが時計をつくる考え方の真髄である。』
基本理念という言葉も非常に大事にされています。就活をしていると、その企業が掲げるミッションなどを聞かされることがありますが、あれはすごく大事なことだったんだなぁと思いました。その基本理念を曲げることなく、より先への進歩を促す仕組みを作っていくことがまずは大事だというわけです。
『要するに、ビジョナリー・カンパニーと比較対象企業の差をもらたしている最大の要因は、経営者の質ではない。重要なのは、優秀な経営陣の継続性が保たれていること、それによって基本理念が維持されていることなのだ。ビジョナリー・カンパニーも比較対象企業も、設立以来いずれかの時点にすばらしい経営者がいたことに変わりはない。しかし、ビジョナリー・カンパニーは、経営幹部の育成と後継計画が比較対象企業より優れており、これがカチカチと時計を刻む時計の主要な部品になっている。』
もう少し具体的に言うと、優秀な経営陣を揃え続けること。納得ですね。
2.ANDの才能
この言葉に相反するものとして「ORの抑圧」というものが挙げられています。安定と革新はどちらか1つしか達成できないといったような、A or Bの考えに支配されるのが「ORの抑圧」です。
それに対して「ANDの才能」を持った経営者は、どちらも両立しえないものではないことを知っている。この相反するものの共存を示す図として、陰陽の模様が説明に使われます。
『確かに、カルトのような文化は危険であり、会社にとって制約になり得る。ただしそうなるのは、陰陽のもうひとつの側が欠けているときである。カルトのような文化は、基本理念を維持するものであり、これとバランスをとるものとして、進歩を促す強烈な文化がなければならない。』
基本理念の維持と、バランスをとる存在として進歩を促す文化も持たねばならないそうです。そしてこれが3番目のポイントに繋がってきます。
3.基本理念を維持し、進歩を促す
これは結論的に何度も出てくる表現です。維持と進歩、どちらも目指すことで企業はどっしりと成長していく。
『あらゆるのが変わらなければならない。その中でただにとつ、変えてはならないものがある。それが基本理念である。少なくともビジョナリー・カンパニーになりたいのであれば、基本理念だけは変えてはならない。 この点から、本書の中心になっている概念が導き出される。その概念とは、「基本理念を維持しながら、進歩を促す」であり、これこそが、ビジョナリー・カンパニーの真髄である。』
これこそが真髄であるようです。
4.一貫性の追求
上で挙げたポイントを、いかに一貫して行えるか。それが最後のポイントです。
『ビジョナリー・カンパニーは基本理念を維持し、進歩を促すために、ひとつの制度、ひとつの戦略、ひとつの仕組み、ひとつの文化規範、ひとつの象徴的な動き、CEOの一回の発言に頼ったりはしない。重要なのは、これらすべてを繰り返すことである。』
少しの間、がんばろうという雰囲気が流れても、それを何十年と続けるのは非常に難しいことだと思います。そこがビジョナリー・カンパニーとそうでない企業の分かれ道となっているようです。
自分には何ができるか
ビジョナリー・カンパニーのエッセンスは分かったとして、個人はどう考えていけばいいのか。それについても少し言及がありました。ようは、小さな単位の組織でも、このビジョナリー・カンパニーの4つのポイントを守れるようにしていけばいいとのことです。
『逆に言えば、今後の生き方が難しくなるとも言える。自分の周囲の人たちに、この本で学んだことを伝えたくなるだろう。自分の会社をビジョナリー・カンパニーにするための努力なら、それなりの資質を持った人に任せておけばいいとは思えなくなって、愕然とするだろう。そして、この本の教訓をいますぐ、この瞬間から活かせることに気付くだろう。最後に、たぶんもっとも重要な点として、社会のなかで重要な役割を担う伝統ある機関としての会社に、常に心からの敬意を払って自分の仕事に取り組むことになるだろう。』
ビジョナリー・カンパニーを築く方法を知ってしまった以上、組織が漫然と活動していることに我慢ならなくなる。そうかもしれないですね。社会人になった時にもう一度読みなおしたいと思います。