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【地方行政のリアル】書評:県庁おもてなし課/有川浩

県庁おもてなし課 (角川文庫)

県庁おもてなし課 (角川文庫)

 

概要

 高知県庁の中に実在する「おもてなし課」の活動にスポットを当てた物語です。

オススメポイント

 地方の行政組織が抱える問題をリアリティたっぷりに描いています。固いテーマに思えますが、有川さんお得意の恋愛要素もあってすっきり読みやすい一冊です。

感想

 学生のころに読んでもピンと来ない部分が多々あっただろうなと思いました。

 1つは、物語の中でしきりに言われる民間の仕事のスピード感とお役所のスピード感の差。これは実際に仕事をしてみないと実感を持てない部分かなと思いました。新しいプロジェクトを立ち上げたならば、出来る限り迅速にアウトプットを出さないと競合に出し抜かれるかもしれません。だらだらと先延ばしにしていては人件費が膨らんで採算が取れなくなります。

 もう1つは、新しいことをやれないお役所体質。これは民間企業にとってみれば自殺と同義です。自分はゲーム会社に勤めているので、まさに真逆だなと思いました。常に新しい価値を提供し続けないと生き残れない業界です。見方を変えれば、新しいことをやりたくてもやれないというのは仕事のモチベーションを保つのが難しそうだなと思いました。

 

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 さて、そんな中でも高知の観光を変えようと四苦八苦する主人公掛水。ひたむきに頑張る姿にはとても好感を覚える一方で、周りに助けてもらってばかりでうらやましいなと思ってしまう一面もありました。たまたま作家の吉門に連絡を取る係りになったがばかりに、彼の全面サポートを受けることができたラッキーボーイ。

 ただ、掛水が素直にアドバイスを聞き入れて、突き放されても食らい付いていったからこそ吉門も彼を認めたわけで、その辺は見習わなければと背筋を正しました。プライドを捨てて教えを乞うことの大事さを改めて認識しました。

 

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 地方の観光業がどんな課題を抱えているのか、概略を掴むことのできる一冊でもあります。人がどんどん減っていく中で、この物語に書かれている以上に状況は深刻なのだと思います。観光を盛り上げて県外から人を呼び、外貨を獲得するというのは一筋縄でいくことではありません。掛水のような若手がブレイクスルーを起こして、面白い企画を立ててほしいものです。

 

 

オススメの本はこちらにまとめています。

A. 誰にでもおすすめできる/是非読んで欲しい作品

B. 大多数の人が面白いと思うはず/この作家さんが好きなら絶対読むべき作品 

 

 

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