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【密度の濃い4編】フィッシュストーリー/伊坂幸太郎

フィッシュストーリー (新潮文庫)

フィッシュストーリー (新潮文庫)

 

概要

 表題のフィッシュストーリーを含む、4作の中短編が収められています。

おすすめポイント

 伊坂さんの作品は長編しか読んだことがなかったのですが、短編もすごいですね。長編を4つ読んだかのような満足感でした。長編よりも短いので密度が濃いですね。描写のすべてが伏線になってるんじゃないかってぐらいです。どれもお見事です。

感想

 佳多山大地さんの解説が丁寧で、伊坂さんの作品をあまり読んでいない僕にとってはすごいうれしいです。解説を読まなければ気づかなかったことが多くありました。文庫の何がうれしいかって、小さく持ち運びに便利なことも大事ですが、解説があるのがうれしいですよね。

 

・動物園のエンジン

 伊坂さんらしい、ちょっと捉えどころのないような雰囲気の作品。『オーデュボンの祈り』を読んだ直後だったため、「伊藤」が出てきたのがすごくうれしかったです。伊坂作品のだいご味ですね。ほっこりする終わり方がグッドです。ただ、解説を読むまで叙述トリックに気づかなかった・・。情けないです。

 

・サクリファイス

 どちらかと言えばミステリー色が強めで、けっこう種明かしをしてくれる作品だなぁと思いました。肝心なところはうやむやになっていて、頭を働かせる余地が作られているような。考えられてるなぁと思うと同時に、考えさせられる作品です。解説に書いてある、「山田」と依頼人の関係の話は難しいです。。

 

・フィッシュストーリー

 表題作になるだけはあるなぁと唸ってしまいます。「誰かに届くのかなぁ」と叫んだロックバンドの思いは、届かなかったのかもしれないけど、世界を救うことになった。壮大なお話のようで、どの人物も普通に生きている感じがして不思議な感覚です。「正義の味方」の人だけはちょっと特別っぽくて違う雰囲気を持っていましたが。

 高校の学園祭で、他のクラスが演劇をやっていました。ロックバンドのシーンだけチラ見したのを覚えているのですが、キーとなるシーンだけを見たらしいのです。これも不思議な縁だなぁと思いました。

 

・ポテチ

 4つの中では一番好きです。終わり方はもちろんとして、主人公2人の絶妙な距離感がよいですねぇ。野球がカギとなっていることなどもいろいろと匂わせてあったり。

 『ポテトチップスに塩味とコンソメ味のあることはこれほど素晴らしき哉と落涙すること請け合いの快作』。まさにその通りですね。最後まで読み終わった後に、なぜタイトルが「ポテチ」なのだろうと考えて気づきました。伊坂さんの作品はこういう塩梅がホントに上手いですねぇ。

 

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