【逃す幸せ掴む幸せ】岳飛伝 十 天雷の章/北方謙三
概要
水滸伝、楊令伝に続く北方謙三の北方水滸伝第3部。その10巻です。
感想
9巻ではついに戦が始まり、一気に物語が加速しだしました。このまま最後まで突っ走っていくのかなと思ったところでしたが、今回はちょっと拍子抜け。ちょっと煮え切らない感じでした。
大きく動いたのは水軍の戦いでしょうか。韓成中は倒せませんでしたが梁山泊の勝利。今後に大きな影響を与えそうです。
印象に残ったのは、サイヒョウです。闇から抜け出し、やっとのことでつかんだチンレイカという幸せ。まさかこんなに早く奪われてしまうとは。彼の死を嘆く王清の言葉も印象的です。
『 悲しみも苦しみもなく、寂しささえもこめられない。ただ笛の音だけが、人が生きることを嗤うように、王清の躰にまとわりついてきている。悲しいのだ。涙が流れているではないか。くやしいのだ。音が、ふるえているではないか。』
『俺は、生きている。王清は、思った。それ自体が、悲しみではないのか。』
さてさて、この件に関してモウコウはどうやって落とし前をつけてくれるのでしょうか。
一方で幸せなエピソードもありましたね。王貴とサイランが結婚。戦い一辺倒だった岳飛の、父親らしい姿。ほほえましかったです。
さて、次の11巻では物語はどうなっていくでしょうか。まず決着がつきそうなのは、南でしょうか。岳飛とシンヨウのコンビは最強ですね。もっと見ていたくなっちゃいます。
カギを握りそうなのが、今回出番の多かったショウケンザイではないでしょうか。彼は梁山泊の一員ではないので、どのような立場で戦いに巻き込まれていくのか。注目です。そして新たなキーワード、民の営み。替天行道にどうやってつながるでしょうか。
以下、話を忘れないためのメモ。
- 水軍の戦。チョウサクの礫は韓成中を殺せず
- テキセイとコウジュウ南宋の造船所を襲撃。
- シンカイが南宋の後宮を襲わせる。犯人は韓成中の忍びにぬれぎぬ。
- ショウケンザイが王貴と一緒に西へ、そして南へ。
- 韓成中は、島に居つくようにシンカイから命ぜられる。
- 王貴とサイランが結婚。シュウギチョウへ。岳飛は小梁山に象を贈る
- モウコウが米を売るなとサイヒョウに懇願。
- サイヒョウとチンレイカが襲撃される。
- 九州の海辺を襲っていたのは、リュウコウギョク。ヘイセイセイという日本人の海賊に出会い、交易を開始
- 結局、モウコウは間違っていた
- シンコウは岳飛とシンヨウの両方を伺えるように砦をつくる。
- 岳飛&シンヨウ vs.シンコウ。岳飛の読みが当たり、深手を追わせる。しかし殺せなかったことに岳飛はしょげる。
岳飛伝シリーズ
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